mad Vとは誰か?Venusが示す新たな "vector"
- 増田
- 8月31日
- 読了時間: 10分
更新日:9月3日
今回BLOCKS.のインタビューとして一人目に彼をあげたのは、私と親交の深いStoop the Raidから彼を紹介してもらった時から
なにか人と違う雰囲気を感じたからである
そしてそんな彼が初のアルバムをリリースしたとのことで、インタビューに踏み切った
挨拶も早々に早速、彼自身のこと、アルバムのこと、さらには思考回路に触れさせてもらった

ー 今日はありがとうございます。よろしくお願いします。
Venus : よろしくお願いします。
ー まず初めに簡単な自己紹介をお願いします。
Venus : Venusといいます。beat maker,DJ名でLoLauって名前でも活動してます。所属は福岡親不孝を拠点とするhiphopクルーのMNDSLDGそしてwell weepsと言うユニットにいます。
ちょっと固いかな。(笑)
ー ありがとうございます。気にせずリラックスして話してくれて大丈夫ですよ(笑)
ところでVenusさんの音楽を始めたきっかけはなんですか?
Venus:ありがとう(笑)
まあ、これいきなり重たくなっちゃうんだけど、俺元々18歳の時から3年間美容師をやっててその時に心の病気にかかっちゃて。本気で死ぬか迷ってたんだよね。
その時たまたま聴いたNF Zesshoさんの「Bad Vibes Only」っていうアルバム聴いて、なんかすげー救われたような気持ちになって。どーせ死ぬなら音楽しよう!と思って始めたね(笑)
ー なるほど。NF Zesshoさんがルーツだったんですね。
Venus:そうだね。特に影響受けてるのはNF ZesshoさんとVAVAさんかなー。ルーツってほどでは無いけど初めてHIPHOP聴いたのは友達のPSPに入ってたAK-69さんで、めっちゃ好きでよく歌ってましたね。
ー PSPに音楽入れてたの懐かしいですね(笑)
Venus:みんなしてたよね(笑)
ー ところで、Venusさんにとって地元(または育った街)のカルチャーや音楽以外で影響受けたものはありますか?
Venus:正直、音楽始めたのはこっち(福岡)に来てからだから地元のカルチャーからはあんまり受けてなくて、やっぱり親不孝通りの影響が大きいかな。
あとは、俺は人が作るフィクションとか空想の世界が大好きで、SF映画やヒューマン系の映画をよく見るね。
あとは既に俺の曲を聴いてくれてるリスナーはわかってくれてると思うけど、アニメや漫画も大好きでかなり影響受けてるね。
それと、やっぱり家族。特に親はすげえ尊敬してる。
ー ありがとうございます。ところで、今回のアルバムについてですが、今作をずばり一言で表すなら何でしょう?
Venus : 「vector」だね
ー このタイトルに込めたメッセージや意味はありますか?
Venus : "vector"って数学的な意味もあるけど、俺は今回「方向性」って意味でつけてて。
音楽をしていく上で自分のスタイルとかやりたいこととか、よく考えることがあって、
でも今作で、自分の方向性がすごい定まった気がして、今回のアルバムを作ってる途中で名付けたかな。
俺は俺のvectorで生きてるし、聴いてる皆んなは皆んなのvectorで生きてる。
俺はそれで良いと思うし、これを聴いてくれた皆んながそう思ってくれたら良いなと思う。

ー なるほど。"方向性" ですね。なんか、Venusさんらしくていいですね
Venus : ありがとう。なんか、俺は自分でも思うんだけど、昔から変わってるってよく言われてきて。だから、自分のこと"mad V"って曲中で言うんだけど。
でも自分と同じように悩んでる奴もいると思うから、俺はそーゆー奴に"お前はお前の方向性でいいんだよ"って言ってあげたいんだよね。
ー 確かに "mad V"って言いますね。もしよろしければ、意味を教えてもらっていいですか?
Venus : Venus(=金星)って見た目は地球にそっくりだけど、成分だったり気圧だったり気温だったり全然違うくて、絶対に人が住めないんだよね。
俺は自分自身のこと狂ってると思うし、ここじゃ言えない行動や言動をしてしまいそうになる時もある。
だから、姿は人間だけど、人間じゃないみたいな。そんな意味を込めて曲中で"mad V(=Venus)"って言ってる。
同じ金星みたいな奴らには特に自分の曲を聴いてほしいね
ー なるほど。では、今作の中で特に聴いてほしい一曲を教えてください。
Venus : んー、やっぱり "myself"かな。
この記事が公開される時にはMVも出てると思うから是非見てほしいし、聴いてほしい。
ー この曲自分も大好きです。聴いてほしい理由は何でしょう?
Venus : ありがとう(笑)
理由はね、この曲は歌詞にもあるけど、
"俺は俺らしく。お前はお前らしく。"てことを伝えたくて書いたんだよね。
音楽してたら一回は考えたりすると思うんだけど、お金のこととか将来のこととか大事な人のこと考えたら"セルアウトしたら良いのか"って自分と葛藤してたことがあって。
でも、セルアウトしたら自分が自分じゃなくなると思ってて。
さっきのmad Vの時に話したと思うけど、俺は自分みたいな奴を音楽で救いたいんだよね。
そこで、それなら俺は俺らしくいようって、この曲で自分のvectorを決めたかな。
だからこそ、自分を見失いそうになったらこの曲を聴いて欲しい。俺が救いになれば嬉しいかな。
ー やっぱりそういう葛藤から出来た曲だったんですね。
Venus : そうだね。なんか伝えたいのは、俺はセルアウトが悪だとは全く思ってないんだよね。ただ、この曲を作ってるとき。自分の"vector" を決める時に、俺は俺らしくいようって、その時の自分が選択したってことだね。
ー ありがとうございます。製作中に1番苦労した曲、逆にスムーズに出来た曲はありますか?
Venus : 苦労したのは 圧倒的に3:07 amだね。
これ自分の夜中に聴く時用のApple Musicのプレイリスト名を曲名にしてて、シンセサイザーを弾いたりとか、自分の中で特に拘りをぶつけた作品だったかな。
逆にDisturbing Noise Armorなんかは感情を鋭くぶつけてて、凄くスムーズに出来たかな。それはそれで調子の良さが出てる曲だから是非聴いてほしいかな。
ー Venusさんは結構曲作るのが早いイメージが僕の中であるんですけど、リリックとかテーマとかどんな感じで決めてるんですか?
Venus : テーマは決めてると言うか"決まってる"ていう感覚に近いかな。やっぱりラップは生物だから、その時その時にビート聴いたり自分で作ったりしてく上で出てきた感情を抽象的なテーマとして書いてるね
あと、普段生活しててパンチラインはメモするようにしてるね
ー なるほど。それが製作スピードに反映されてるんですね。
今回何曲か入ってるプロデューサーとの関係性についても教えてもらえますか?
Venus : Lbrain の兄貴は一緒にwell weepsってユニットをやってるS.v.e.l.lからの紹介で、普段L君って呼ばせてもらってるんだけど、
初めてL君のビートをsound cloudで聴いた時に一目惚れして、速攻連絡させてもらって、三つビートをくれたんだよね。
一つは、自分の incompleteってEPのclumsy spellって曲に使わせてもらったんだよね。
それで、後の二つも絶対に使いたいと思って、今回、Disturbing Noise Armor(REMIX)とproofに使わせてもらったかな。
ー ということは少し前にもらったビートだったんですね。
Venus : そうそう。L君のビートと自分のラップをちゃんとこーいう形で世に出せて、自分の中で上がったね(笑)
あと、もう1人Stoop the Raid は俺が所属してるMNDSLDGっていうレーベルのボスでもあるし、シンプルに仲良くて、サウナ一緒に行ったりとか遊んでますね(笑)
ー この2人を選んだ理由は?
Venus : まあ、なんか2人ともそれぞれ系統は違うんだけど自分には絶対作れないビートを作るし、心からリスペクトしてるマイメンなんで、入れましたね
ー 信頼してるからこそ頼むって最高ですね。ジャケットアートについての拘りはありますか?
Venus : ジャケットに関しては、俺が世界で一番好きなデザイナーのSPECDEEさんにお願いしてて、俺からしたらSPECDEEさんにお願いすることが既に拘りだね。
ー "お願いすることが既に拘り" ってのが一ヘッズとしての気持ちも乗っかってて最高ですね。
Venus : そう。ただただSPECDEEさんのデザインのファンなんだよね(笑)
ー MVはどうですか?
Venus : mvは今回2作品とってるんだよねThe Answer is Nothingと myself。今回のアルバムには死ぬほど力入れてるからアルバムの中から2作品はどうしてもだしたかった。バイブス上がる系の曲でもよかったんだけどなんかよりしっかりと俺の思いを伝えたいって曲をmvにしたかったからこの二つになったかな。この記事が出た時にはもう公開されてると思うから、是非見てほしい。伝わってたら嬉しいな。
ー ありがとうございます。ここからはVenusさんのラップに対しての考えを聞きたくて。
Venus : お、いいですね
ー ご自身にとってのhiphopを一言で表すと何でしょう?
Venus : "リアル" だね
ー なるほど。では、Venusさんにとって"リアル"とはなんですか?
Venus : んー。そうだね、人生・ポジティブ・ネガティブを全て晒すことかな。
リアルの定義なんて人によって違うと思うけど、俺はそんな感じかな。だから最高も、怒りも悲しみも吐く。それが俺のリアルなんだと思う。
ー ありがとうございます。確かにVenusさんのラップは心の内側というか、感情を曝け出してるリリックが多く感じれますもんね。
ちょっと抽象的になるんですけど、メインストリームとアンダーグラウンドなんて言葉がありますけど、どちらをどう捉えてますか?
Venus : んー、俺はどっちもリスペクトしてるからこそ、メインもアンダーも関係ないと思ってて。自分の表現したいものを表現出来たらそれで良いと思ってる。
ー つまり"vector"ですね
Venus : そう(笑) 本当にそれを伝えたいんだよね。どっちも良し悪しはあるし、ただ俺は俺でいるっていうのを俺は表現出来たら良いかな。
ー ありがとうございます。これから何か挑戦したいことはありますか?
Venus : 自分が尊敬してる人と共作して行きたいなと思ってる。あとは会えるうちに、生きてるうちに友達と馬鹿騒ぎしたいね。地元の友達も福岡の友達も皆んなと会いたいな。あと、皆んなでガシャガシャしたい(笑)
※ガシャガシャ = モンスターとブラックニッカを混ぜて皆んなでストローで飲むこと(Venus流)
ー ガシャガシャ怖いですね(笑)
Venus : ハハハ、今度一緒にしましょう(笑)
ー タイミングでしましょう(笑)
ところで今作を通してリスナー1番伝えたいことは何ですか?
Venus : リリックに全部入れてるから言うことはないかな。たくさん聴いて、たくさん感じ取ってほしい。
ー ありがとうございます。それでは最後にこの記事を読んでくれてる人たちに向けてメッセージをお願いします。
Venus : この記事読んでくれたら、Venusって言う人間を少しわかってくれたかなと思ってます。これからも作り続けるから、応援してくれたら嬉しいと思ってます。本当に、最高の夜を一緒にみんなと作り続けれたら嬉しいです!
どこかで、会いましょう!
このインタビューの日、長時間話をさせてもらったVenus氏は、どこか人と違う魅力を感じさせた。それは彼の笑顔から滲み出る人としての温かみや、言葉の節々から出る経験の数とその裏に潜む鋭く痛む感情の記憶。それらを全て曝け出してるからこそ、どんどん引き込まれるような魅力を感じたのかもしれない。
今回のアルバムは彼自身が彼自身を取捨選択し、Venusとしての方向性を決めた。ハードかつ愛のある一枚。
それは再生ボタンを押したあなたのその時の感情、環境、風景によって、意味を成して心にスッと入り、あなたの中の"mad V"を肯定してくれ、あなたの気付かなかった新たな価値観を提供してくれる作品となっている。
そして、全て聴いた頃、新しい"vector"が見えてくる。
【writing】 増田
【以下作品情報並びにアーティスト情報】
"vector"
1. intro
2. D.D.T
3. frozen scarf
4. 3:07 am
5. stiff trigger
6. The scenery that day...
7. Disturbing Noise Armor [Remix] (Prod. by Lbrain)
8. proof (Prod. by Lbrain)
9. The Answer is Nothing (Prod. by Stoop the Raid)
10. myself
11. delicate sparkle
12. I'm Coming Back (outro)
All lyrics by Venus
1.2.3.4.5.6.10.11.12
Prod. by LoLau
7.8
Prod. by Lbrain
9
Prod. by Stoop the Raid
Mixed & Mastered by LoLau
Design by SPECDEE
【Artist】

Venus
MNDSLDG・well weeps所属
福岡県、親富孝通りを拠点に活動
18歳の頃に美容師として働きながら心の病を抱え、人生に迷う中でNF Zesshoのアルバム『Bad Vibes Only』に救われたことをきっかけに音楽活動を開始。
ポジティブもネガティブも包み隠さずリリックに刻むスタイルが特徴で、自身を「mad V」と表現し、狂気や葛藤をも肯定しながら、常にその時にVenus自身が感じていることを、美しい日本語に落とし込み、強いメッセージとして発信している。
【その他情報等】
今後の出演イベントはこちら↓
9/5 CANDLE
9/13 Better Than Yesterday
9/19 Lay back





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